こんにちは、キャリコンのもとよしです。
僕はキャリアコンサルタント実技試験の「ロープレ対策」を、よくやらせていただいているのですが、
相談者の主訴がよく分からない、というご相談をいただくことがあります。
相談者の悩みは何となく分かる。でも、悩みの本当の核心にはたどり着けていない気がする…。
ロープレ練習を重ねても、イマイチしっくりこない。
そんな経験はありませんか?
今回は、主訴を正確に捉える方法について、
悩みの本質の紐解き方から具体的な質問話法例、実践例まで、丁寧に言語化し解説します。
主訴を捉えるコツを押さえれば、どうやって話を展開するべきか、も分かり、実技試験でも自信を持って臨むことができます。
ちなみに今回の考え方は、社会人生活のほとんどを人材業界に捧げてきた筆者独自の考え方です。
僕が思ったことを書いてるだけなので、「正しい・正しくない」の論争はどうかご勘弁を…
ただ、言えることは、
・僕は本業で、ずっと人のキャリアに関わる仕事をしてきた
・これまでの経験と今の知識では、この理論は十分使えると思っている
・僕自身、キャリコン試験は一発合格(オールA判定)
(保険はこんなところで良いでしょうか)
好きに書いているので、参考程度にしてください^^
◾️この記事を書いた人(タップして開く)
1年間で100回以上、キャリコンロープレ試験対策を実施しています。また実務では人材紹介業に従事しており、多くの求職者の方のキャリア支援を行って参りました。これまでに培ってきたノウハウを活用しつつ、常により良い対策を提供できるよう邁進中です。 (キャリアコンサルタント試験/キャリ協 学科・実技共に一発合格、オールA判定)
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【結論】主訴を正しく捉えるコツ
相談者の主訴を正しく把握するには、以下を意識して面談してみましょう。
相談者の①選択肢と②各選択肢を選んだ際の問題点を把握すること
上記2点を把握することで、相談者の根本的な悩み(主訴)に辿り着くことができます。
ここから先で、詳しく解説していきます。
そもそも主訴とは何か?
主訴とは、相談者が最も強く訴えている悩みのことを指します。
相談者が『キャリアコンサルティングを受けたい』と考えた理由そのものですね。
「主訴」は相談者目線の悩みです。キャリコンから見た課題である「見立て」と間違えないように注意しましょう!
なお、主訴が最初から明確に語られることは少なく、聴き手であるキャリアコンサルタントが対話を通じて明らかにしていく必要があります。
相談者が最初に話す内容は表面的なものが多くて、その背景にある課題や不安を丁寧に掘り下げることが、大事なわけですね。
なぜ人は悩むのか?悩みの構造を理解する
主訴を捉えようと思ったら、悩みの構造を理解することが大事だなって、僕は思います。
悩みとはなぜ起きるのか?、を紐解いていきます。
「選択肢」と「問題点」から、悩みは生まれる
複数の「選択肢」があり、それぞれの選択肢に対して「問題点」があることによって、その選択ができない状態から、悩みは生まれる。
と僕は考えています。
これは、選択肢が2択でも3択以上でも、同じことだと思います。
シンプルな例
「選択肢」と「問題点」について、シンプルな例で解説します。
たとえば、
今の仕事を続けていこうか、悩んでいます。
という発言があれば、
「①継続する」選択と、
「②継続しない」選択があり、
それぞれに問題点を抱えている状態と考えることができます。
「①継続する」という選択→この選択にはAという問題点がある
「②継続しない」という選択→この選択にはBという問題点がある
それが判断できないから悩んでいる。
なぜなら、どちらかの選択肢に問題点がなければ「問題がない方」を選べばいいだけですし、両方に問題点があっても自分で判断できているなら悩んでいない。
人が悩まずに選択できるケースは、「選んだ先に問題点がないから」だと僕は思うのです。
もしくは、悩んだ上で決断できたケースは、「他の選択肢よりも、その選んだ選択肢の方がメリットが大きいと判断したため」からだと考えます。
つまり、悩み(悩み続けている状態)というものは、それぞれの選択肢に、何かしら問題点があり、どれにしようか選べない状態から起きているということです。
人生の悩みはもっと複雑。でも、ちゃんと整理できる
ここまで、「選択肢」という表現をしていますが、これは2択や3択に限った話ではありません。 人生における悩みはもっといろんな要素が複合的に絡み合う複雑なもの。
たとえば、
今の自分の生き方は、このままでいいのだろうか?
ああなったり、こうなったり、他にも色々あるんじゃないか・・?
という漠然とした状態だと、複雑な悩みって感じがします。どうやって対応すればいいのか、難しそうですよね?
しかし、そんな複雑な悩みでも、「選択肢と問題点」という考え方で、分解して整理することができます。
ゆっくり整理してみますね。
まず、「このままでいいのか?」という内容から、一つ目の選択肢として「①現状を継続する」があります。
ただ、「①現状を継続する」を選ぶと何かしら不都合なこと(つまり問題点)があるから、①を選ぶことに悩んでいるわけです。
このとき、「①現状を継続する」という選択肢の問題点を、きちんとヒアリングする必要があります。
そして、「②現状から変わる」という二つ目の選択肢の存在。
現状からどう変わればいいのか色々悩んでいるのであれば、現時点でどんな選択肢を考えているのか、そしてそれぞれの選択肢に踏み切れない問題点は何か、を1つずつ訊いていきます。
たとえば、選択肢と問題点を、焦らず1つずつ紐解いていくことで、以下のようなことが分かるかもしれません。
「②現状から変わる」ために、こんな選択肢と問題点が出てくるかも
◾️選択肢②-1:転職したい
→問題点:でも、自分がやりたいことが分からない
◾️選択肢②-2:資格をとって専門知識を得たい
→問題点:ただ、どんな資格が有利なのか分からず選べない
◾️選択肢②-3:副業を始めていずれ独立したい
→問題点:けれども、どんな副業があるのか分からない
このように相談者が抱える選択肢と問題点を分解・整理することで、その人がなぜモヤモヤってしているのか、悩みの核心(主訴)が見えてくるわけです。
選択肢がいくつかあるケース、そして、各々の選択肢に対して複数の問題点があるケースもあるので、相談者との対話の中でじっくり紐解いていきます。
ちょっと余談(見立てにも使える)
さっきの選択肢と問題点、主訴を把握するために使えますが、キャリコンとしての「見立て」を掴むのにも使えます。
以下の赤字について、その内容に関連した自己理解不足や仕事理解不足があれば、見立てとして成立します。
あくまで例ですが、
【①現状を継続する】
→問題点:単調な仕事ばかりで力が身につかず将来が不安
※問題点は相談者が思っていることなので、主訴の材料になる
→キャリコンが心の中で疑問に思うこと:将来が不安というが具体的な不安とは?どんなキャリアプランを考えているのか?本当に力が身につかない仕事なのか?上司に相談して業務に変化をつけることはできないのか?
※見立ての材料になる
【②現状から変わる】
◾️選択肢②-1:転職したい
→問題点:でも、自分がやりたいことが分からない
※問題点は相談者が思っていることなので、主訴の材料になる
→キャリコンが心の中で疑問に思うこと:どんなことに興味関心があるのか?どんなキャリアプランを考えているのか?どんな転職先(業界・職種)があるのか調べているのか?
※見立ての材料になる
◾️選択肢②-2:資格をとって専門知識を得たい
→問題点:ただ、どんな資格が有利なのか分からず選べない
※問題点は相談者が思っていることなので、主訴の材料になる
→キャリコンが心の中で疑問に思うこと:どんな専門知識を想定しているのか?何がしたいのか?自分にとって何が有利だと思うのか?どんな資格があるのか調べているのか?調べているならその資格が何につながるか考えているのか?
※見立ての材料になる
◾️選択肢②-3:副業を始めていずれ独立したい
→問題点:けれども、どんな副業があるのか分からない
※問題点は相談者が思っていることなので、主訴の材料になる
→キャリコンが心の中で疑問に思うこと:どんなキャリアプランを考えているのか?何をしたいのか?
※見立ての材料になる
あと、キャリコンが心の中で疑問に思ったことを相談者に訊いてもいいのですが、訊き方には要注意です。
そのままストレートに訊いてしまうと、威圧感を与えたり嫌な気持ちにさせてしまうことがあります。
相談者の心境を考え、配慮しながら、ゆっくり丁寧に訊いていきましょう。
主訴を捉える第一歩:来談目的の語尾に注目する
では、実際の相談対応やキャリコンロープレ試験において、まず最初に何に着目すべきなのか?
答えは、来談目的の語尾に着目すること。
僕はこれまでの経験上、これが一番効果的だと感じています。
来談目的とは?
来談目的とは、相談者がキャリコンに最初に伝える悩みの概要のことです。
ロープレ試験だと、キャリコンが「本日はどのようなお悩みでいらっしゃいましたか?」と聞いた後に、相談者が「〜〜で、〜〜いう状況で、〜〜で悩んでいて相談に来ました」というやつです。
来談目的の語尾に注目!
この来談目的の中で、特に注目すべきは語尾です。この語尾には、相談者の主訴のヒントが隠れています。
たとえば、
【来談目的】
今の仕事が単調な内容で、このままだと将来のキャリアが不安です。ただ、転職するのも不安があって。
どうしたらいいか悩んでいます。
この場合、もっとも注目したいのは、「どうしたらいいか悩んでいる」という語尾。
「現職での状況」や「転職への不安」も、もちろん傾聴し紐解いていきますが、それだけにならないように注意が必要です。
現職のことだけ話をして、ロープレ15分終わり、ってなると主訴の把握は不十分ですよね?
相談者は「どうしたらいいか悩んで」来訪しているわけですので。
最終的に、『なぜ、どうしたらいいか悩んでいるのか?』に辿り着くことが重要なのです。
そこを目指して、選択肢と問題点を把握していきましょう。
「来談目的=主訴ではない」という場合がほとんどです。来談目的は表面上の薄い情報でしないので。
しかし、来談目的の語尾を深ぼることで、主訴が見えてくることは多いです。
主訴を捉えるための具体的な質問例
来談目的の語尾の深堀りで、最終的には、相談者の選択肢とその選択肢の問題点を確認していくわけですが、ここでは具体的な質問例をいくつか紹介します。
1. 選択肢を確認する質問
相談者の選択肢を確認するときの話法例です。
「現時点で考えていることでいいので」とハードルを下げてあげたり、イメージしやすいように具体的な数値を伝えてあげると、相談者は考えやすく答えやすくなります。
「現段階で、どのような選択肢をお考えですか?差し支えなければ、教えていただけますか?」
→ 現時点で考えられる選択肢を具体的に引き出す質問です。
「少し範囲を広げて考えると、他にどんな方向性がありそうですか?思いつく範囲で構いませんので、教えていただけますか?」
→ 視野を広げることで、潜在的な選択肢を探る質問です。
「これまでに、やってみたいと思ったことや挑戦したいと感じたことは、どんなことがありますか?」
→ 相談者の関心のある分野や興味を具体化する質問です。
「5年後や10年後に、どのような働き方や生活をしていたいと考えていますか?」
→ 具体的な未来の生活や働き方をイメージしてもらう質問です。
2. 各選択肢に対する感情を深掘りする質問
選択肢を教えてもらった際には、それに対して相談者はどう思っているのか、訊いてみましょう。
気持ちを教えてもらった際には、伝え返しをし、しっかり受容共感を示しましょう。
「今の仕事を続けるとしたら、どんな気持ちになりそうですか?」
→ 現職に対する気持ちを未来の視点で柔らかく聞きます。
「転職した場合のことを想像すると、どんな感情が湧いてきますか?」
→ 未来の選択肢をイメージしてもらい、その際の感情を引き出します。
「現状を続けるとしたら、安心する気持ちと不安な気持ち、どちらが大きくなりそうですか?」
→ 選択肢を選んだときの気持ちのバランスを掴む質問です。
「この選択肢について、率直にどう感じていますか?何かしら気になる点があれば、お伺いしてもよろしいですか?」
→ 理由ではなく感覚的な引っかかりや違和感を引き出す質問です。
3. その選択肢に踏み出せない問題点を感情で掘り下げる質問
問題点(つまり、相談者にとってのデメリットやリスク)を聞き出す話法例です。
「現職を続けることと転職すること、それぞれに迷いがあるとしたら、どんなところが引っかかっていると感じますか?」
→ 直接理由を求めず、迷いの感覚を柔らかく訊き、何を問題点と捉えているのか探る質問です。
「転職について、不安に感じる部分があるとしたら、それはどんなところだと思いますか?」
→ 不安の具体的な気持ちから、何を問題点と捉えているのか探る質問です。
「現状を続ける場合と転職する場合、それぞれを想像したときに、どちらがよりご自身に合っていると感じられますか?」
→ しっくりくる感情を通じて、何を問題点と捉えているのか探る質問です。
「どちらの選択肢を考えたときも、気持ちの面で引っかかるところがあるとすれば、それはどんな点でしょうか?」
→ 具体的な感情の違和感を聞き出します。
上記はあくまで例です。
ご自身に合ったやり方を考える際の材料にしていただければと思います。
決まったやり方なんてありません。身も蓋もないですが、極論、やり方はなんでも良いのです。重要なのは相談者ファーストであること。
相手の気持ちを考えて、配慮し、いろんな気づきを得てもらえるように質問していきましょう。
実践編:主訴を捉える相談対応の流れ
最後に、具体的な面談の流れを解説します。
主訴を捉える、という部分に焦点を当てて説明します。
具体例:Aさん(30代/男性/営業職/妻子あり)
来談目的
「上司との関係がつらくて転職を考えていますが、家族の生活もあるので決断できず、どうしたらいいか悩んでおり相談に来ました」
①まず行うこと
僕自身が「相談者ファーストで進めやすいやり方」で説明していきます。
まず、来談目的を最初から最後まで丁寧に伝え返します。ここを適当に伝え返してしまうと、相談者が『え、そうじゃないんだけど…。ちゃんと聴いてた?』と思われます。手を抜かず、一語一句レベルで丁寧に伝え返します。
そして、来談目的の語尾に着目。
「どうしたらいいか悩んでいらっしゃる、ということで、どのような点でお悩みなのか、まずはお話ししやすいことだけで構いませんので教えていただいてもよろしいでしょうか?」と訊きます。
このように、いきなり話題を変えるのではなく、来談目的の語尾に少し触れておきます。
ここで注意。
相談者とは出会ってまだ1分そこら。ラポールなんて微塵もありません。
なので、「お話ししやすいことから」とか「差し支えない範囲で」など言葉を加え、相談者が話をするハードルを出来るだけ下げるようにします。
僕は来談目的に対して、「もう少し詳しく教えていただけますでしょうか?」という訊き方はしないです。
1つのテーマに対してだったらいいのですが、来談目的全体に対してだと、あまりに抽象的すぎて、相談者は『何を答えたらいいの?どの部分を詳しく話せばいいの?』と困るからです。
訊くのは簡単ですけど、相手に対しては雑な訊き方なんですよね…。
(僕は相談者役を何百回とやらせていただきましたが、ただ単に「もっと詳しく」と言われたとき、意外と回答に困っています笑)
ただ、序盤では、これ以上は訊きません。
結構ナイーブな話になりやすいですし、まだ相談者のことがよく分からない状態のまま核心に迫るのは、僕はやりにくさを感じるからです。
②相談者の状況と気持ちをしっかり確認し、土台を作る
相談者のことをしっかり知りたいので、
・今の仕事の内容や環境など
・仕事のやりがいや辛いこと
・上司との関係性(来談目的で言ってたから)
といった状況や、それに対する相談者の気持ちも訊いていきます。
なぜそう思ったのか、という理由やきっかけなども質問します。
もちろん、相談者の回答はしっかり受容共感し、伝え返しを行います。
相談に限ったことじゃないですが、人の話にはしっかりリアクションを示すことが大事だと思っています。
僕はこれをしないと、相談者のことがよく分からないんですよね!
相談者がどんな状態で、それをどう感じているのか、何を考えてるのか、が分からないと、主訴の核心に迫る話なんて出来ないです(僕は)。
相談者の状況や気持ちをしっかり確認し、受容共感し、しっかりリアクションすることで、相談者がどんな思考をお持ちなのか、少しずつわかってきます。関係性も自然と構築されます。
あと、僕は支援状況を訊くこともよくやります。
より詳しいことは、こちらの記事でも紹介していますので、ご参考までに↓
③選択肢や問題点を確認していく
ここまできて、初めて、選択肢や問題点を質問していきます。
15分のロープレであれば、後半残り5,6分をこの時間に使います。でも、これも自分に合ったスケジュールでやれば問題ないです。
ロープレ練習は、ただ数を重ねても効率が悪いので、「自分のやり方を見つける」とか「自分にしっくりくるスケジュールを試す」など、何を習得するか決めて練習をしましょう!
質問内容は、前述した主訴を捉えるための具体的な質問例をご参考に。
まとめ
今回は、相談者の主訴の捉え方について解説しました!
悩みは、複数の選択肢と、各々の選択肢に問題点があるために生じるものです。
主訴は、相談者目線の最も核心的な悩み。
それを把握しようと思ったら、相談者が考えている複数の「選択肢」と「問題点」を整理し、深掘りしなければなりません。
この構造を理解し、選択肢と問題点を丁寧に紐解いていくことで、主訴が明確になります。
また、来談目的の語尾や感情に着目し、相談者の話を丁寧に傾聴することで、表面的な悩みから本質的な課題にたどり着くことができます。このプロセスを通じて、相談者が抱えるモヤモヤの核心を捉え、適切な支援を提供することが可能になります。
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(2024/12/15 更新)
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